Posted On 2026年9月30日

イヴェント・レポート “SUOMI FEAST 2026”

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Report▲Kiyoyuki Watanabe & Yuzi Okumura
Pix▲Yuzi Okumura

 ’19年の前回開催から実に7年──’26年5月、フィニッシュ・メタルの祭典“SUOMI FEAST”が2日間に亘って執り行なわれた。実は、’20年にも開催のアナウンスがあるも、コロナ禍によって中止に…。よって今回、「待ってました!」とばかりに喜び勇み、多くのスオミ・フリークが会場の渋谷STREAM Hallへと駆け付けたのであった。

 今回の出演バンドは、KALMAH、…AND OCEANS、SUOTANA、GLADENFOLD、VALKEAT、FENYX RISINGという6組。メロデスにメロパワ、フォーク・メタルに王道HR/HM…と、過去最高に幅広いジャンルが揃ったことでも注目を浴びていたが、実は…AND OCEANSとSUOTANAが、’20年のラインナップにも含まれていたことは特筆しておきたい。

 尚、ここではヘッドライナーのKALMAHと、セカンド・ビルの…AND OCEANSにスポットを当て、熱狂の模様を振り返っていくことにしよう。

■…AND OCEANS

 “SUOMI FEAST 2026”──出演全6組のうち、アタマの4バンドの出順は日替わりだったが、トリとトリ前は固定。開催両日ともセカンド・ビルを務めたのは、30年以上のキャリアを誇る…AND OCEANSであった。

 ’95年結成、’98にアルバム・デビューという長い歴史を持つ彼等は、そのバンド名からして独特の奇妙さを放つ、変種ブラック・メタル6人組だ。ちょっと変わったシンフォニック・ブラック・メタル・バンドとしてスタートすると、’00代初頭、インダストリアル・ブラック・メタル方向へと大きく舵を切り、一時はHAVOC UNITという名義で活動。’17年に復活を果たし、そこからは初期のスタイルへと回帰するも、最新作『THE REGENERATION ITINERARY』(’25)では、再び電子音楽要素を採り入れ、過去に培われた実験精神の再統合を果たしている。

 4番手のSUOTANAの演奏が終了すると、転換BGMが流れる代わりに、ニューエイジ調のBGMが流れ、それはバンドのセッティング中、ずっと流され続け、15~20分ほど時間をかけて、じわじわとショウのイントロダクションへと昇華していった。彼等はかつて、セカンド・フルレンス『THE SYMMETRY OF I – THE CIRCLE OF O』(’99)の限定盤ボーナス・ディスクで、アンビエント作品を丸々1枚制作したこともあり、それを考えれば、こうした意表を突く演出にも納得がいく。

 続いて、ショウのオープニング・ナンバーとして繰り出されたのは、第4作『CYPHER』(’02)のオープニング・トラック「Fragile: Pictures of Silence: Melting the Skies」。同作では、それ以前よりも楽曲をコンパクトにまとめ、インダストリアル・ブラック路線を採っており、長いキャリアの中でも独特の位置を占めるアルバムだ。それだけに、初来日ライヴの1曲目にそれを持ってきたことには驚かされた。

 しかし──この意外な選曲が、ショウの幕開けとして思いのほか機能していたのもまた事実だ。フロア前方に熱心なファンが集結してはいたものの、決して日本での一般的な知名度が高いとは言えないバンドゆえ、観客の多くはどのようなショウを見せるのか、序盤にはまだ測りかねていたはず。そんな中で繰り出された、3分弱というコンパクトで、しかし強いリズムを持ったこの曲は、…AND OCEANSならではの世界へ誘なわれる導入曲としては、むしろ絶妙だったろう。

 ところが──そこから一転。2曲目に選ばれたのは、ファースト・フルレンス作『THE DYNAMIC GALLERY OF THOUGHTS』(’98)のオープニング・トラックにして、彼等の代表曲でもある「Trollfan」。初期DIMMU BORGIRを思わせる典型的シンフォニック・ブラックの名曲だ。インダストリアルな質感からシンフォニック・ブラックへ──過去と現在を自在に行き来するようなセットリストが、その長きキャリアをそのまま体現していた。

 その後──3曲目以降は、復活後のアルバムと初期作品をバランスよく配しながら進行。全10曲、約50分のステージにおいて、ハイライトとなったのは、意外にもサード・フルレンス『A.M.G.O.D.』(’01)収録の「Tears Have No Name」だ。ランス・メタルとでも呼びたくなるダンサブルなこの曲は、ここまでのショウを通して、どこか奇妙な世界観に浸りきった観客にとっては、もはや何の違和感もなく受け入れられたのではないだろうか。

 現在、オリジナル・メンバーとして残っているのは、ギタリスト2人だけとなっているが、周りを固める布陣は強力そのもの。キーボードには、フィニッシュ・ブラック界の重要バンド、ALGHAZANTHの初期メンバーであったアンティ・シモネンが構え、ヴォーカルとして現FINNTROLLのヴェレスことマティアス・リルモーンスが圧倒的な存在感を放つ。メンバー内では若手と目されるドラムのカウコ・クーシサロも凄まじい。彼の高速ブラストは、時折使われるバッキング・トラックの電子ビートと対比されることで、人間の力で叩き込まれるからこそ生まれる迫力というものを、強く感じさせてくれた。

▲Mathias Lillmåns<Vo>

 エレクトロニック、インダストリアル、シンフォニック、そしてブラック・メタル。それらが混ざり合う奇妙で重厚なサウンド。その全てを一夜のステージで体感させる。まさに…AND OCEANSの真骨頂とも言うべき素晴らしいショウだった。(渡辺清之)

[SETLIST:01&02/05/26@渋谷STREAM Hall]
1.Fragile:Pictures Of Silence:Melting The Skies 2.Trollfan 3.Förnyelse I Tre Akter 4.Aquarium Of Children – Ajatusten Merenpinta 5.Cloud Heads 6.The Dissolution Of Mind And Matter 7.Inertiae 8.The Black Vagabond And The Swan Of Two Heads 9.Tears Have No Name 10.Cosmic World Mother

■KALMAH

 5時間近くに亘る本フェスティヴァルのトリを務めたのは、今回で通算5度目の来日となるKALMAHだ。前回来日時、現時点での最新作──セルフ・タイトルの『KALMAH』(’23)を携えてのショウを行なった彼等だったが、今回“SUOMI FEAST”では、初日公演で名盤第4作『THE BLACK WALTZ』(’06)のリリース20周年を記念したスペシャル・セットを披露した。

 約75分、全14曲の充実したステージにおいて、『THE BLACK WALTZ』から実に5曲、さらに初期4作から合わせて10曲が選ばれるという、古参ファンには堪らないセットリストとである。とりわけ『THE BLACK WALTZ』からの「Defeat」「Bitter Metallic Side」「To the Gallows」、サード『SWAMPSONG』(’03)からの「Doubtful About It All」といったレア・ナンバーが飛び出す度、フロアは熱狂をもって応えていた。

 ステージ上のメンバーは、5度目の来日ということもあってか、終始リラックスしたムード。フロントマンのペッカ・コッコ<Vo,G>は、手元のビールを美味しそうに呷りながらパフォーマンスを展開。「日本のビールはどうだ?」などと言いつつ、どうやらアサヒよりもエビスがお気に召したようで、銘柄を選り好みする姿には、“らしい”酒呑み感が漂っていた

 他にも、「もう年寄りだから、夜中に5回も小便しちゃうんだよ」などと自虐的ジョークを飛ばしたりし、言葉の細部が伝わらずとも、会場の笑いを誘いながら上機嫌に話し続けていたペッカ。直前に出演した…AND OCEANSが、まさに深海の底のような張り詰めた世界観を構築していただけに、KALMAHの泥(沼)臭く、豪快で、人間味にあふれたステージとのコントラストは何とも印象深い。

▲Pekka Kokko<Vo,G>
▲Antti Kokko<G>

 演奏面では、KALMAHらしい骨太のメロディック・デス・メタルを存分に味わわせてくれると同時に、純然たるメタルとしての醍醐味も堪能させてくれた。弦楽器隊3人が揃って身体を上下に揺らしながら刻む、縦ノリのパフォーマンスを見れば、改めて彼らが旧き良きメタルの王道に根差したバンドなのだと感じさせられる。

 熱演を支えていたリズム隊の奮闘にも触れないワケにはいかない。元々今回の来日に際して、リズム隊の2人──ティモ・レーティネン<B>とヤンネ・クスミン<Ds>は、FENYX RISINGとの2ステージをコナす予定だった。ところがティモは、急遽SUOTANAでも代役としてベースを弾くことになり、結果として両日ともに、何と3回ずつステージに立つこととなったのだ。にもかかわらず、疲労を微塵も感じさせない堂々たる演奏を披露してくれたことには、脱帽せざるを得ない。

▲Timo Lehtinen<B>
▲Janne Kusmin<Ds>
▲Veli-Matti Kananen<Key>

 尚、2日目はセットリストを大幅に入れ替えるという趣向が用意されていた。ファースト『SWAMPLORD』(’00)からの「Evil In You」や、セカンド『THEY WILL RETURN』(’02)からの「Hollow Heart」、さらに『SWAMPSONG』からの「The Third, The Magical」、「Burbot’s Revenge」といった初期の名曲群が改めて掘り起こされており、初日を『THE BLACK WALTZ』20周年記念特別セットとするなら、翌日は彼等の歴史を総括する特別セットといったところだったろうか。両日ともに足を運んだファンをも満足させる、実に贅沢な構成だ。

 とはいえ、初日に用意された『THE BLACK WALTZ』の特別セットだけでも、そのスペシャル感は充分過ぎるほどだろう。長年に亘って支持され続ける王道メロデスの強靭さと、メンバー自身がそれぞれ持つ豪快な人間味。その両方を存分に堪能させてくれた初日のKALMAHは、『THE BLACK WALTZ』が刻んだ20年の歴史を背負いながらも、決して過去を振り返るだけではない、現在進行形のバンドとしての底力を鮮烈に示してくれた。(渡辺清之)

[SETLIST:01/05/26@渋谷STREAM Hall]
1.Mehto(SE) 2.The Evil Kin 3.Haunted By Guilt 4.Defeat 5.Take Me Away 6.Bitter Metallic Side 7.To The Gallows 8.They Will Return 9.Doubtful About It All 10.Moon Of My Nights 11.Seventh Swamphony 12.The Groan Of Wind 13.The Black Waltz 14.Heroes To Us 15.Hades

[SETLIST:02/05/26@渋谷STREAM Hall]
1.Mehto(SE) 2.The Evil Kin 3.Haunted By Guilt 4.12 Gauge 5.Take Me Away 6.Evil In You 7.To The Gallows 8.Hollow Heart 9.The Third, The Magical 10.Burbot’s Revenge 11.Moon Of My Nights 12.Holy Symphony Of War 13.The Black Waltz 14.Heroes To Us 15.Hades

■その他の出演バンド

▲GLADENFOLD
▲初日にトッパーを務め、翌日は3番手を任されたメロパワ6人組。ファンタジー・ベースのメロディック路線主体ながら、シンガーは時にグロウルもコナす。意外や結成20年超のヴェテランながら、パフォーマンスからはぎこちなさや経験不測が感じられた。
▲FENYX RISING
▲KALMAHのリズム隊を擁する4人組。’80年代HR/HMのエッセンスを現代に受け継ぐサウンドは、パワー・メタルとグラム・メタルの間を行き交う。ネイティヴ・アメリカン風の見た目がインパクト大なシンガーは元ADAGIOで、ギタリストはかつてKALMAHのツアー・メンバーを務めた技巧派だ。
▲VALKEAT
▲フィンランドの伝統楽器カンテレをフィーチャーしたフォーク・メタラー。プログレッシヴなテイストと牧歌的抒情が同居する楽曲は、共に歌えるパートが盛り沢山。日本語MCや「手ヲ挙ゲテ!」「さびハ簡単、一緒ニ歌エ!」といった絶妙な日本語の煽りも功を奏し、大いに盛り上がった!

▲SUOTANA
▲’24年のKALMAH来日公演でもオープニング・アクトを務めたメロデス6人組が再来日。両日、4番手としてイヴェント中盤から終盤へと場を引き締める役割を果たし、アグレッシヴな中にもメランコリックな民族テイストが光る独自路線でオーディンスを魅了した。

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