Report&Pix●Veppy
’26年に結成45周年を迎える北海道出身の老舗HR/HMバンド、SABER TIGER。彼等が久々に出演する海外公演ということで、バンドのファンのみらなず、広くSNSにて大きな注目を集めたドイツの屋外メタル・フェス“HEADBANGERS OPEN AIR”(以下HOA)を、’25年夏に現地取材してきた。

ドイツのハンブルク近郊で開催されているHOAは、’98年の第1回からオールド・スクール色の濃いメタル・フェスとしてマニアの間で人気を博してきた。当初は地元密着型の小規模イヴェントだったが、3日間開催となった’00年代後半ぐらいから徐々にスケール・アップしていき──実は、早くから日本のアンダーグラウンド・バンドを招聘していたことでも知られる。
’02年にはGORGON、’03年にはSOLITUDE、’05年にはMAVERICKが出演を果たしており、コロナ禍明けの’22年には、何とあのLOUDNESSも出演。それ以来の日本からの刺客となったSABER TIGERは今回、3日間の中日、7月25日(金)のサード・ビルという好ポジションでの参戦だった。フェスのポスターを見ると、DEMONやGRAHAM BONNET BANDよりも上にロゴがあって驚くが、これはそのまま主催者からの期待値の大きさを物語っていると言えよう。また、SABERの長きキャリアへのリスペクトと、遥々日本からやって来てくれたことへの感謝の念も、そこから強く感じられた。
’18年に北欧、東欧、ロシアを廻る過酷なツアーを敢行したSABERだが、メタル大国とも言えるドイツでのライヴは今回が初めて。ドイツといえば、かつてハノーファーで“御大”木下昭仁が『MESSIAH COMPLEX』(’12)のマスタリング作業中、突然の大病で倒れた国であり、それ以前にも、他の大型フェスへの出演を画策したものの実現せず…といったこともあった、ある意味“因縁の地”であり、これでようやくリヴェンジを果たしたと言えるかもしれない。
ただ、今回のHOA出演については、事前の海外発信があまり出来ていなかったので、一部の熱狂的なマニア以外からは、ちょっと反応薄めといった印象で、ライヴの前に行なわれたミート&グリートの集まりも、マニア連中は異常に盛り上がってくれたものの、正直期待したほどではなかった。しかしながら、それに気落ちしてしまうことなく、SABERのメンバーはみんな、そんな状況だったが故に、逆にリラックスした様子で本番に臨めたような気がする。出演前には会場内を散策し、のどかな雰囲気が「札幌の田舎に似ている」との発言もあり、そういった環境面もプラスに働いた…のかも。
ここで改めて、SABER TIGERの現ラインナップを記しておこう。バンド創設メンバーにして、唯一のオリジナル・メンバーでもある木下<G>以下、下山武徳<Vo>、田中“マシン”康治<G>、hibiki<B>、水野泰宏<Ds>という面々は、’17年からずっと不動。そんな強固な結束で“最新作が常に最強”というサイクルを積み重ねてきた彼等は、THE NIGHT ETERNAL、REZETと好パフォーマンスが続いたあと、20時少し前に出番を迎えたワケだが──その直前、オーディエンスの多くは「日本から来たバンドがどんな感じか見てやるか」といった感じで、言ってみれば冷やかし半分で集まっていたような印象を受けた。
セッティングを終え、オープニングSEの「Rise」をバックにメンバーが登場した時点で、まだまだ空は明るいまま。この季節のドイツは、夜の8時を回っても日の入り前なのだ。楽器隊が揃い、最後に姿を現した下山の咆哮を合図に、「The Vague Blessings」が走り出した瞬間、お手並み拝見といった感じでステージを眺めていた観客、そして、ステージ袖にいた関係者の殆どが、あまりの演奏力の高さ、下山のカリズマ性に思わずビックリ! みんなポカ~ンと口あんぐりで、まるで置いてけぼりを喰らった感アリアリだった。間髪入れずに続いた「Angel Of Wrath」では、拳を振り上げ、激しくヘッドバンギングしまくるオーディエンスが、あっという間に増殖していく。

2曲を演奏し終えたところで最初のMC。予想以上の好反応を見て手応えを感じたのか、メンバーからも笑みがこぼれる。続いて、久保田陽子<Vo:’92~96>在籍期の名曲「No Fault/No Wrong」がプレイされると、メロディの美しさと技巧の凄さ──特に木下と田中のツイン・ギターの妙技に、観客はさらに「メタル魂に火が付いた!」とばかりに熱量を高めていく。ステージ前のフォト・ピットでも、他のバンドとは明らかに違う反応が見られた。プレスの撮影が許可されているのは最初の3曲だけだが、多くのカメラマンが3曲目の終了前にピットを離れてしまうところ、SABERの出番では、全員が最後までそこに残り、1枚でも多くの写真を撮ろうとやっきになっていたのだ。それだけみんな衝撃を受けたということだろう。

「屈辱」、「斑の鳥」、「Hate Crime」と、会場の雰囲気も楽しみつつ後方か観戦していたら、いつの間にかHOAのオーガナイザーがそばに立ち、「予想以上に素晴らしい楽曲とパフォーマンスだ。また是非、HOAに招待したいね!」と絶賛の言葉をかけてくれた。観客の熱狂っぷりも凄い。hibikiがトリッキーなプレイを見せると、「今の観たか?」と、隣と顔を見合わせ、そのプレイを真似する者もいれば、水野のプレイに合わせて激しく首を振りながら、エア・ドラムに興じる者もチラホラいて、高速ナンバー「First Class Fool」では、クラウドサーファーが大量に発生! 日本ではあまり見ないその光景は新鮮だったし、文字通り芯を食った反応があちこちで見られ、彼等はしっかり爪痕を残したんだな…との実感が溢れてきた。


その後もオーディエンスの熱は冷めることなく、ラスト2曲──「Permanent Rage」~「Sin Eater」も衝撃と共に駆け抜け、1時間のステージはあっという間に終演。圧が強く、攻撃的な楽曲群で攻めまくり、“今の”SABER TIGERの存在感を十二分に示したパフォーマンスだったが──それと同時に、美しいメロディを湛えた、日本人ならではの情に溢れるバラードを披露していたら、HOAの観客はどんな反応をしただろうか…とも思った。限られた時間の中でそれは贅沢な注文かもしれないが、次回またここドイツの地を訪れる機会があれば、そうしたSABERのもうひとつの面も披露して欲しいところだ。
ショウ終了後、マーチャンダイズ・ブースにはあっという間に長い行列が出来て、TシャツやCDなどが次々に売れていく。CDについていえば、現地の標準価格のほぼ倍だったにもかかわらず、あっという間に完売してしまった! メンバーが姿を現すと、ミート&グリートの時とは打って変わって、写真やらサインを求める人、人、人で溢れてしまったのだから凄い。バックステージでも大きな拍手でもって迎えられ、ステージ袖で彼等のパフォーマンスを観ていたグレアム・ボネットが、何と賞賛の言葉と共に控室を表敬訪問してくれて、SABERの面々はレジェンドとの交流を大いに楽しんでいたようだ。
個人的にも──このフェスのあと、欧州現地でIRON MAIDENのライヴを楽しんだのだが、SABER TIGERのTシャツを着て行ったら、その道中や会場でちょくちょく話し掛けられ、「HOAでの評判が話題になっているよ!」と言ってくるメタラーもいた。たった1時間のステージではあったが、彼等がHOAのオーディエンスに与えたインパクトは、相当なモノがあったのだろう。これが一度きりの思い出に終わらず、“次”のステップへと続いていってくれることを切に願いたい…!!
[SET LIST:25/07/25@“HEADBANGERS OPEN AIR”]
1.Rise(SE) 2.The Vague Blessings 3.Angel Of Wrath 4.No Fault/No Wrong 5.屈辱 6.斑の鳥 7.Hate Crime 8.First Class Fool 9.Permanent Rage 10.Sin Eater
その他の出演バンド
今回が初めてのHOA訪問だったが──前夜祭となった7月23日、車で1時間弱程度の宿泊先から会場へ向かうと、ただひたすら農村風景が続いていて、「こんなド田舎でメタル・フェスが…?」「本当にこの道で合っているのか?」などと不安が募ってきた頃、突然“メタル”なフェス会場が出現して、いきなりの風景の変化に新鮮な驚きを覚えた。
この日は遅めの会場到着となったため、チェックしたのはトリを務めたBLIZZARD HUNTERのみ。南米ペルー出身のバンドだが、何度かヨーロッパ・ツアーを行なっていたこともあって、HOAのオーディエンスからの支持は篤く、ステージでセッティングを始めると、もうかなりの声援が飛ぶ。JUDAS PRIESTの影響を随所に感じさせる正統派メタル・サウンドは、地元ドイツのメタル・マニア層にはかなり刺さるんだろうな…と、熱量高めなパフォーマンスを堪能させてもらった。
翌24日──HOA本祭初日は、メキシカン・スラッシャー、STRIKE MASTERがトップを務めた。’23年に来日し、“TRUE THRASH FEST”(以下TTF)に参戦していたので、その名を知るマニアもいるだろう。基本、猪突猛進型のスラッシュを貫きながらも、テクニカルな展開も織り交ぜているのが注目ポイント。特にベースは手数が多く、指が気持ち悪いぐらいに動き回り、スラップもコナすも、それがスラップに聴こえないという謎奏法に──日本で観た時もそうだったが、妙なクセがあるなと思ってしまった。

地元ドイツのHAMMER KINGは、エピック・テイストが感じられるパワー・メタラー。ただ、ライヴで観ると小型版HAMMERFALLといった様相で、ショウ途中に巨大なハンマーをステージに持ち込んだり、召使的女性がステージに登場し、HAMMER KINGコインを投げ込んだりといった演出が大いに受け、終始オーディエンスの喝采を浴びていた。

同じくドイツのDESTRUCTORは、スラッシュ・メタル寸前の“漢”気溢れるパワー・メタラー。彼等も’25年にTTF出演で来日済みだが、その日本でのパフォーマンスと同じく、派手なパフォーマンスを展開するワケでもないし、正直ステージに華はなく、むしろ暑苦しさすら感じさせる。だが、それこそが彼等の魅力であり、汗臭い武骨さが逆にマニア層から支持される所以なのだろう。名盤とされる『MAXIMUM DESTRUCTION』(’85)からのナンバーが披露されると、かなりの声援を集め、個人的にもこの日のベスト・アクト候補だった。

同じくベスト候補に挙げたいのが、これまた来日経験のあるNWOTHMバンド、SCREAMERだ。現時点での最新作『KINGMAKER』(’23)と’19年作『HIGHWAY OF HEROES』からの楽曲中心のセットは、来日時より、湿り気のある哀愁メロディの割合がいや増したとの印象で、以前よりも“聴かせる”ライヴで勝負。外連味ないパフォーマンスも好印象で、HOA以外のフェスでも好位置でプレイしているのも納得だ。

そしてこの日、トリを任されたのは元MANOWARのギタリスト、ロス・ザ・ボス! 正にレジェンドな彼の登場に観客は沸きに沸き、初期MANOWARのベスト・ヒット的セットは「最高!」のひと言。ヴォーカルのマーク・ロペスもかなり歌えていたし、これで盛り上がらないワケないでしょ…! ひとつ気になったのは、ドラマーが誰だったのか…という点。元MANOWARのライノが叩くとの前情報もあったが、本当に彼がプレイしていたのか、残念ながら確信は得られなかった。

SABER出演日の25日、地元のオールド・スラッシャー、ASSASSINが2番手として登場。個人的に初期2枚のアルバムが好き過ぎて、’10年にTTF出演で来日した際、メチャクチャ楽しみにしていたのに、その時はパフォーマンスに失望したのが思い出される…。さらに、オリジナル・メンバーでバンドの顔とも言えたロブ・ゴンネラが既に脱退していたとあって、「少しチェックしとけば良いかな」ぐらいの思いで観たら、キレッキレで圧の高いスラッシュ攻勢が実に素晴らしく、悪夢の来日公演を払拭する嬉しい裏切り! しかも、このフェスにTTF主催者の松尾氏も来場していると知り、大阪出身の彼へ向けて、バンドのクラシック「Baka」を「Aho」に急遽変更するサプライズでも楽しませてくれた。セット全体としては、名盤の誉れ高い『THE UPCOMING TERROR』(’87)収録曲を中心に、他のアルバムからもバランス好く楽曲を組み込んでいたのがなかなか良かった。

海外のメタル・マニアの間でグングン人気が急上昇している注目株、WINGS OF STEELもかなりの声援を集めていた。US正統派メタルを標榜しながら、LAメタル風なキャッチーさも備え、他の数多のNWOTHM群とは違うテイストこそが彼等の魅力。この日は、本邦デビュー作にして、当時リリース間近だったセカンド・アルバム『WINDS OF TIME』(’25)からの楽曲も披露し、どちらかといえば、スピードを落とした楽曲中心のセットを組んできていた。ルックスに華があるし、これからの展開が楽しみ…と思っていたら、今年、SABATONのオープニング・アクトに抜擢されてビックリ!

日本ではほぼ無名だが、海外フェスでちょこちょこ名前を見かけて気になっていたTHE NIGHT ETERNALは、予想外の盛り上がりっぷりに仰天してしまった。サタニック風味もあるダーク・パワー・メタルは、そもそも個人的にかなりのツボ。終演後、音源を購入しようとマーチ・ブースへ向かうと、大行列になっていて、音源だけでなくTシャツもほぼ完売してしまったのは残念でならなかった…。

この日、実は密かに楽しみにしていたのが、フィーメイル・メタル・バンドのBURNING WITCHES。直前のSABER TIGERの演奏があまりに凄まじかったため、プレイ面で“比べられた”風の空気が流れてしまい、そこは少々不運だったが、見た目の華やかさ、幾分クラシカルで硬派なメタル・サウンドは、かなり好感が持てた。日本盤もコンスタントにリリースしているし、どうして来日しないのか…と思って観ていたのだが──そういえば、ドラマーのララ・フリッシュクネヒトは、過去に日本在住経験アリとのこと。すると終演後、日本語で話し掛けてきてちょっと意表を衝かれてしまった。
この日のヘッドライナーはNWOBHMの大ヴェテラン、DEMON。とても楽しみにしていたのに、シャトルバスの運行がアクシデントにより不安定なスケジュールとなったため、泣く泣く離脱。遠くで鳴り響く「Night Of The Demon」を聴きながら、会場を後にすることとなった…。
最終日となる3日目は、フレンチ’80’sレジェンド、TITANが2番手を務めた。「きっと“昔の名前”で出ているんだろうな」「まぁ、彼等のクラシックが聴けたら良いかな」などと軽い気持ちでいたら、見た目のオッサン感とは裏腹に、激熱で現役感たっぷりなパワー・メタルを炸裂させていて驚愕。セットを最新作『LACRIMAE MUNDI』(’25)中心に組んでいたのも好感が持てた。

以前、他のフェスで観て一目惚れし、今回も楽しみにしていたのが、ジャーマン・スラッシャーのTRAITOR。キレ好くザクザク切り刻むスラッシュ・スタイルに加え、運動量高めのステージ・アクションにも目を奪われる。まさに、期待を裏切らない素晴らしいパフォーマンスだ。TTF松尾氏もいたく気に入ったようで、実は今年の同フェスへの出演が決定。是非、日本のHR/HMファンにも彼等の激演を楽しんでもらいたい。

意外やサード・ビルのGRAHAM BONNET BANDのショウは、RAINBOWの名曲「Eyes Of The World」でスタート。言うまでもなく、かのグレアム・ボネット率いるバンドだが、RAINBOW、M.S.G.、ALCATRAZZ…と、演目は彼の代表曲で網羅されていた。当時77歳(!)という高齢ながら、衰えが殆ど感じられなかったそのパワフル・ヴォイスに、「これは盛り上がらないワケがないよな!」と納得。しかしながら、バック陣の演奏にはやや怪しい部分もあったため、そこは頑張ってもらいたいところだ。

この日のトリ前は、リチャード・ベイリーとマーク・スタンウェイのキーボード・チームに、ドラムスにはミッキー・バーカーと、元MAGANUM組を揃えたバンド、KINGDOM OF MADNESS。HOAでは客層が違ったのか、“もうひとつのMAGNUM”とも言うべき布陣にもかかわらず、観客の反応は今イチだった。但し、「Vigilante」、「All Englands Eyes」、「On A Storyteller’s Night」にはウルっときたし、本編ラストの「Kingdom Of Madness」は鳥肌モノだった。ヴォーカルは男女2名体制で、今風なルックスに反してクラシカルな歌唱の男性シンガーは、確かCLOVEN HOOFでも歌っていたハズ。アンコールで披露されたのは、MAGANUMを率いた今は亡きトニー・クラーキン<G>、さらには故オジー・オズボーンに捧げる…とのMCで始まった、ドラマチックこの上ない「The Lights Burned Out」で、それには今回のHOAで一番の感動を覚えた。
そして、最終日のトリは地元の酔いどれスラッシャー、TANKARDだった…のだが、またもや宿泊先へ戻ることを考慮した結果、深夜スタートのバンドは断念せざるを得なく…。やはり、遠くでその演奏を聴くことしか出来なかった。終演後、彼等はミート&グリートを行なったそうだが(当初の予定から変更に…)、午前1時(?)にどれだけのファンが集まったのか、ちょっと気になってしまった(笑)。
さて、最後に──海外のメタル・フェスは、現地の交通事情や宿の確保など、超えなければならない高いハードルこそあるものの、日本ではなかなか味わえない体験が得られることは間違いない。ハードルが高い分、そこに集うオーディエンスもかなり濃いマニアだらけで、その空間自体がとにかく濃厚。もしチャンスがあれば、足を運んでもきっと損はないハズだ!
