Report & Pix▲Yuzi Okumura

’26年1月末から2月頭にかけて、ドイツのヴェテラン・スラッシャー、DESTRUCTIONが久々の来日を果たした。実に’18年4月以来で、通算では9回目。’19年にツイン・ギター編成となってから初めての来日だ。現バンド・ラインナップは、首魁シュミーア<B,Vo>に加えて、その’19年に久々のセカンド・ギタリストとして迎えられたダミル・エスキッチ<G>、’21年にオリジナル・ギタリストのマイク脱退に伴い起用されたマルティン・フリア<G>、何度かツアー・ヘルパーを務めて’18年に正式メンバーとなったランディ・ブラック<Ds>という4人。
そもそもツイン・ギターのDESTRUCTIONが日本でライヴを行なうこと自体、今回が初めて。最初に4人組となったEP『MAD BUTCHER』(’87)&『RELEASE FROM AGONY』(’87)リリース時にはそのチャンスがなく、彼等がようやく日本初上陸を遂げたのは、バンド内のゴタゴタで’89年にバンドを追い出されたシュミーアが、それから10年の時を経て電撃復帰し、さらにしばらく経った’03年5月のことであった。同郷のKREATORの初来日が’93年、SODOMはそれよりもひと足早く’91年だったことを思い返すと、かなり遅かったことが分かる。もっと言えば、TANKARDだって’99年初来日だったのだから。まぁ、シュミーアはHEADHUNTERで’91年に来日済みなのだが──というか、DESTRUCTIONよりもHEADHUNTERの方が先に日本へ来ていたという事実に、改めて驚いているファンもいるだろうか。
ちなみに、DESTRUCTION初来日時のバンド・ラインナップは、シュミーア、マイク、マーク・レイン<Ds>で、シュミーア復帰&バンド再生後、3枚目となる『METAL DISCHARGE』(’03)がリリースされる少し前というタイミング。以後わりとコンスタントに来日してくれるも、上述の’19年までずっとマイクがひとりでギター・パートを担い続けていたため、我々が4人組のDESTRUCTIONを観る機会はついぞなかったのだ。
さらに、再来日以降はその多くがイヴェント絡みだったことも、今となってはあまり話題に上らなくなっているかも。2度目(’05年)と3度目(’07年)の来日は“THRASH DOMINATION”、その次の’09年は“Extreme the DOJO”に出演し、’13年も“THRASH DOMINATION”参戦…と、なかなかヘッドライナー公演につながらず、久々にその機会を得たのは、通算6度目となる’14年になってからだった。その後、“THRASH DOMINATION”には’16年にも出演し、’18年の前回来日時は今回と同じく単独公演だったが、それがマイクにとって最後の日本となってしまう。今回、その頃からシュミーア以外が総替えとなっていたことには、月日の過ぎ去る速さを感じざるを得ない。
とはいえ、’21年には完了していた新生ラインナップを遂に目撃することが出来たのは、幸いだったと言えよう。無論、マイクのいないDESTRUCTIONに不安を抱きながら会場へ足を運んだファンもいたとは思うが。ただ、現行メンツになってからの2枚、『DIABOLICAL』(’22)と『BIRTH OF MALICE』(’25)を聴いて、シュミーアさえいれば…との境地に到ったファンも、きっと少なくないのでは? そして、実際にライヴを目の当たりにしてみて、多くのファンが、その“シュミーアさえいれば”との思いを強くした違いない。

結論から言ってしまうと、ズバリ“シュミーア、偉大なり”である。いや…正直に言うと、マイクのあのギター・サウンド、ギター・プレイの偉大さを思い知らされる瞬間も何度かあるにはあった。だがそうしたマイナス要因を、シュミーアの圧倒的なカリズマがその度に消してくれたのだ。来日時、シュミーアは66歳…って、とてもそうは見えない。’80年代当時よりはゴツくなっているものの、体型は崩れていないし、独特なシャウトにもまだまだキレがあって、まるで歳を取るのを忘れてしまったかのよう。
さらに、スラッシュ・メタルのライヴにしては、女性ファンが目立っていたのも、シュミーアが今も“推しメン”たる魅力に満ち満ちていたからこそ。事実、HEADHUNTERを立ち上げた頃のシュミーアは、その美形っぷりが再発見(新発見?)され、一気に女性ファンを増やしていっていた。きっと今回の来日公演には、当時からの長年のファンが多数駆け付けたのではないか。尚、本稿ではジャパン・ツアー初日、横浜はReNY betaでの模様をお伝えしよう。

そんな女性ファンの熱い視線も注がれる中──ショウはお馴染み「Curse The Gods」で幕開けた。“嵐の前の静けさ”といったイントロも含め、この『ETERNAL DEVASTATION』(’86)冒頭曲は、DESTRUCTIONのライヴ1曲目としてすっかり固定化している。初来日公演もそうだったし、’18年の前回来日時も同様。無論、そうでない時もあったが、多くの場合──どのアルバムのツアーであっても、1曲目は「Curse The Gods」というのがファンの間でも定着している。『ETERNAL DEVASTATION』の…というよりも、むしろ初ライヴ・アルバム『LIVE WITHOUT SENSE』(’89)のオープニング・ナンバーであるからして、そうした意識がもはや刷り込まれているのだろう。当然、サビの「Curse!」はみんな大絶叫だ。
「コンバンワ、トキオ~! カワサキ~! ジャパ~ン!!」という短い挨拶に続いては、『INFERNAL OVERKILL』(’85)から「Death Trap」! シュミーアったら、“ジャパン”以外は全部違うよ…と思ったら、ビートが激走する寸前にちゃんと(?)「ヨコハマ~!!」と叫んでくれた。観客の反応はのっけから上々。超満員なのは、バンドの人気の高さもあるが、実のところ、会場が小さ過ぎるからだったり。
聞くところによれば、来日のオファーがあった時点で、もう都内の主要なライヴ会場には空きがなく、プロモーターは会場探しに四苦八苦したとか。何とか押さえた最初のハコ(結果的に2公演目となったShinjuku club Science)はキャパ数百人で、チケットを売り出すとモノの数分で売り切れてしまい、追加でさらに必死コイて探し出したのが、このReNY betaだったそう。但し、ここもキャパ400人と決して大箱とは言えず、やはりチケットはあっという間に完売してしまった。
場内はまさにスシ詰め──あるいは、満員電車状態。だから…ではないが、実はプロモーターから事前に、クラウドサーフやステージ・ダイヴなどの“各種危険行為”は厳禁…との注意喚起がなされていた。それには、一部ファンから「スラッシュ・メタルのライヴでサーフもダイヴも禁止なんて…!」と抗議の声が上がるも、実のところ、のっぴきならない事情がある。憶えている人もいるだろう。前回来日時、ヘタクソなステージ・ダイヴァーがマイク・スタンドを倒してしまい、こともあろうかシュミーアの顔面を直撃! いつもファンにはめっぽう優しいあのシュミーアが激怒し、スタンドを蹴り倒した…という顛末があったのだ。
さらに遡れば’14年来日時にも、シュミーアが狭いハコでのサーフについてマナー講義(?)を行なう一幕があったらしい。となれば、プロモーターがピリつくのもよ~く分かるし、実はバンド側からも、ステージ前には“しっかりした柵を設置すること”といったリクエストが出されていたそうで──だったら今回に限っては、またまた小さなハコ故に禁止も止むナシ…と、誰もが納得だったろう。ごく一部の空気を読めない輩を除いては…。幸いだったのは、わずかに数名がサーフを試みたものの、ステージへは到達出来ず、演奏の妨げになることがなかったこと…か。
よって、今回シュミーアは終始ご機嫌。得意の日本語MCを随所に挟みながら、もう序盤にすっかりオーディエンスを掌握しきっていた。それにしても、何だあの“我らがアニキ感”の健在っぷりは…?! とっくに還暦を過ぎているなんて、とてもとても信じられない。誰もが彼の一挙手一投足に釘付けで、強めの煽り&アジりを「もっと喰らいたい!」と眼を輝かせてさえいる。おかげで、新加入&日本初見参で注目されて当然のギタリスト2人が、可哀相なぐらい目立たないし。
イケメンのダミル(実はSTRYPERのマイケル・スウィート似)に対し、マルティンはもっとワイルド系…と、見た目もキャラも対照的で、ギター・スタイルだって、ダミルが典型的なシュレッダーなら、マルティンはラフなパワーで押し切るタイプ…と、これまた全く違ってて、そういう意味では、それぞれに個性を際立たせ、もっと観客を惹き付けても良いのに…。ダミルはショウ本編終盤にソロ・タイムが設けられ(その際、シュミーアから「最近、父親になったばかり!」と紹介されていた。ちなみに、奥さんはBURNING WITCHESのロマーナ・カルクール)、凄まじい速弾きテクで大喝采を浴びてはいたのだが。


ギター・パートに関しては、マイクのプレイ・センスがあまりに奇抜で独特過ぎるため、ダミル&マルティンとしても、その再現はもとより、オリジナルを凌駕することなど到底不可能との判断もあったろう。殊にダミルは、それ故にマイクのフレーズをなぞることはなく、思いの向くままどちらかというと自由に弾きまくっていたようだ。一方のマルティンは、特徴的なフレーズはなるべくそのまま弾きつつも、やはり自由度を残したプレイで勝負。
多分2人は、『MAD BUTCHER』&『RELEASE FROM AGONY』頃のマイク&ハリーを、それぞれマルティンが前者、ダミルが後者と想定していたのではないか。実際「Mad Butcher」では、苛烈な掛け合いソロ、ツイン・ハーモニーといった、その’80年代終盤のヴァージョンを復活させていたし。また、スピードを落としてザクザク始まる「Life Without Sense」では、オリジナル・ヴァージョンにはないツイン・フレーズが加えられていて、そういった点も見逃せない。
もうひとりの注目メンバー、ランディはというと、持ち前のタイトな安定感で、これまた歴代のドタバタ・ドラマー達とは異なるノリが印象的だった。特にキックの正確さが光り、かといって、以前ANNIHILATORで叩いていた時のような高精度に執心することもなく、当然ながらPRIMAL FEAR在籍時ともまたスタイルを変え、ちゃんとDESTRUCTIONならではのスラッシュの流儀を心得ていた点は見事この上ない。恐らくは、わざとドタバタ感も出すよう絶妙にコントロールしていた…のだろう。

キャリアを遡れば、元々スラッシュ・メタルともパワー・メタルとも無縁なバンド・ライフを送っていた彼は、’93年にかのマイク・マンジーニの後任としてANNIHILATORへ加入する際、相当な猛特訓を余儀なくされたそうで、言ってみれば、その頃から対応力には秀でていたのだ。ならば──既に正式加入から8年が過ぎようという今では、ランディのビートこそが“現DESTRUCTION流”となって久しい。古株の中には、「ドラムが巧過ぎる!」と贅沢な不満を漏らすファンもいたかもしれないが。
セットリストは、新旧レパートリーをそこそこバランス好くミックス。どうしても’80年代の人気曲が多くなってしまうのは、ヴェテラン・バンドとしては致し方ないところだし、『ALL HELL BREAKS LOOSE』(’00)から「The Butcher Strikes Back」、『THE ANTICHRIST』(’01)から「Nailed To The Cross」&「Thrash ‘Til Death」も、とっくに定番化し“外せない曲”となっている。その点では、『METAL DISCHARGE』(’03)~『BORN TO PERISH』(’19)の7枚から全く選曲ナシというのがちょっと残念ではあった。
それでも、最新作『BIRTH OF MALICE』から4曲もセレクトされ、『DIABOLICAL』(’22)からも表題曲が披露されたことは特筆しておきたい。新作からのチョイスが、メッセージ性の強い「Scumbag Human Race」「No Kings No Masters」「A.N.G.S.T.」に加えて、始動から40数年を経て世に出された、満を持してのバンド名を冠す「Destruction」だったのも、なるほど…と唸らされる。しかもその「Destruction」は、アンコール1曲目にもってきていたのだ。
過去曲のタイトルが散りばめられた歌詞も、一度聞けばすぐ覚えられ、共に叫びたくなること請け合いの「We’re Destruction!」というメイン・コーラスも、ツイン・ギターを活かした鮮烈なソロ・パートも、確かにこの「Destruction」という曲は、全てにおいてライヴ映えし、何もかもがライヴ向きで、ファン/観客を前に生演奏してこそ…な曲だからして、それも当然と言えば当然。今後ライヴにおける重要定番曲になっていくことも、最初から運命付けられていたかのようだ。

定番といえば、アンコールのラス前に「Bestial Invasion」、大ラスに「Thrash ‘Til Death」も、ある意味でお約束ではあるものの、みんなそれを待ち望んでおり、この2曲を最後にやってもらわないと、どうも「しっくりこない」というファンは少なくないハズ。
ショウ序盤から大いに熱狂しまくり、ヘドバンに、モッシュに興じまくり、サビを絶叫しまくり、曲間には隙あらば“DESTRUCTIONコール”で何度も何度もバンドを湛えた満員のオーディエンスは、それこそ「ここが最後の暴れ時!」とばかりに残る体力と気力を全開放! 「ファンタスティックだったぜヨコハマ! Have a good night!! ドーモアリガトー!!!」とシュミーアがシメると、すかさず映画『オーメン』のテーマが流れ、それを掻き消さんばかりの“DESTRUCTIONコール”がまた起こる。


19時5分頃にイントロSEが流れてから約85分。“死ぬまでスラッシュしまくる”覚悟で全編を堪能しきったオーディエンスは、フランク・シナトラのアウトロ(「Strangers In The Night」)を聞きながら、みんな満足気な表情を浮かべていた。言うまでもなく、「サーフもダイヴも禁止だったから楽しめなかった」なんて誰も思ってすらいなかったろう…!!
[SET LIST:30/01/26@ReNY beta]
1.Intro(SE)~Curse The Gods 2.Death Trap 3.Nailed To The Cross 4.Scumbag Human Race 5.Mad Butcher 6.Life Without Sense 7.SE~Diabolical 8.SE~Total Desaster 9.No Kings No Masters 10.A.N.G.S.T. 11.SE~The Butcher Strikes Back 12.Damir G Solo 13.Eternal Ban 14.Antichrist [Encore]15.Birth Of Malice(SE) 16.Destruction 17.Bestial Invasion 18.Thrash ‘Til Death 19.Outro:Ave Satani@The Omen OST(SE)~Strangers In The Night@Frank Sinatra(SE)
