Text●山田貴教
Pix●Thomas Mazerolles
(except※ by Yuzi Okumura)
協力●Veppy (pix* at ATTIC)
’24年11月に初開催され、大反響を呼んだジャパニーズ・メタルの“現在(いま)”を伝えるライヴ祭典“STRIKE BACK”。元々は、映像監督の山田貴教(OUTRAGEの映画やメタル/ラウド系バンドのMVを多数手掛ける)が主宰するDJイヴェント“METAL VAMPIRE”の20周年を記念して企画されたのだが、引き続き「国内HR/HMシーンに一石を投じることが出来たら」との思いから、以降も継続されることとなり、’25年11月16日、その第2回が執り行なわれた。
会場は第1回と同じく川崎のCLUB CITTA’。この第2回より、フェスの名前を冠した“METAL”、“VAMPIRE”という従来の2ステージに加えて、第3の“ATTIC”ステージが増設され、出演バンド/アーティスト数がさらに増えたことも特筆しておきたい。では、13時スタートで終演は21時と、今回も濃密な長丁場となった“STRIKE BACK 2025”の模様を、山田監督本人に振り返ってもらうことにしよう…!!


*謎に包まれた和メタル・バンド:SABAKI
VAMPIREステージにて、“STRIKE BACK 2025”の開始を告げたのは、一切のプロフィールが謎に包まれた鬼面の和メタル・バンド:SABAKIだ。彼等がオープナーを務めたのは、あとから振り返ってみればかなり象徴的なことだったと思う。バンドがステージに姿を現した瞬間、まず目に入ってくるのは、鬼の面であり、和の衣装だけれども、実際に場の空気を掴んでいったのは、そうした視覚的要素よりも、バンド・サウンドそのものだった。三味線や和太鼓を含む特異な編成、そして、バンドの世界観そのものばかりが注目されそうなのに、SABAKIの場合はそうならなかったのだ、

フェスの一番手を務めるのはそう簡単なことではない。観客の側もイヴェントの雰囲気を探りながらだったろうし、当然フロアの空気もまだ暖まってはいなかったが、演奏が進むにつれて、どんどんみんなの視線が集中していくことが分かった。そう、SABAKIこそがオープニングを飾るに相応しいバンドだったのだ。

プログレを軸にダークな世界観を構築:EVRAAK
続いてMETALステージに登場したのは、暗黒プログレ・シーンからの刺客、EVRAAK。紅一点シンガーにサックス奏者も擁する彼等は、場の空気を一段階引き締める役割を担っていた。音は重く、質感もダークで、緻密に構築された楽曲でも圧倒する。その序盤の登場は、開始から間もない時間帯における“地ならし”となってもいたろう。実際にライヴを観て最も印象的だったのは、ダークでありながらクールな感覚も伴っていた点だ。

それにより、音の構造や展開が自然と耳に入ってくる。ただ、イヴェントとしての流れの中で考えた場合、この落ち着いた重さが、そのあとに続くバンド群と明らかに異なっていたことは強調しておかねばならない。また、他の出演バンド/アーティストの多くが、彼等のステージをチェックしていたことも付け加えておきたい。

*広島発の熱量高いライヴ・アクト:SNAGGLETOOTH
3番手のSNAGGLETOOTHがVAMPIREステージへ登場すると、その場の空気は一気にラフになった。ロックン・ロールの匂いが前に出て、さっきまでの張り詰めた感じが徐々にほぐれていく。良い意味で音は荒いが、雑ではない。その危うさを含め、ちゃんとバンドの色になっているのも注目点だ。フロアの反応も素直で、考えるより先に身体が動く…といった観客が目立つのも印象的だった。本イヴェントとしては、この振れ幅の大きさ自体が重要で、SNAGGLETOOTHはその役割を自然に担っていたように思う。


*メタル魂全開で挑戦し続ける有望株:MELT4
若手世代の中でも着実に段階を上がってきているバンドだと、今回、MELT4のステージを観て改めてそう感じた。スラッシュ・メタルを軸にした音楽性はこれまでと一貫しているが、ステージ全体の見え方が以前よりも整理され、勢いだけで押すのではなく、“どう見せるか”をちゃんと考えていることが伝わってきたのだ。音の鋭さはそのままに、余計な力みが減っているとも感じさせた彼等。そのパフォーマンスからは、若さと経験のバランスがちょうど切り替わる地点、その瞬間を見ているような感覚も得られた。


*今まさにノリに乗ってるバンド:END ALL
END ALLの登場で、VAMPIREステージの空気がまた少し変わった。それまで少し壁があったステージとフロアの境目がどんどんと曖昧になり、最後には一体となって、壁が崩れていくかのような盛り上がりを見せたのだ。どういったジャンルのバンドで…というのではなく、とにかく今、目の前で起きている衝動を受け止めろ──そんな音でもあった。彼等のライヴは、きれいにまとめることよりも、ただぶつかっていくことが優先される。その姿勢は“STRIKE BACK”という場において、むしろ誠実に映った。


今回、彼等が担っていたのは、フェスの流れを良い意味で一度荒らす役割だったのかもしれない。というか、このポジションでEND ALLが出演したのは、本イヴェントにとって大いに意味があったではないだろうか。
*国内屈指の動員を誇る孤高の存在:THOUSAND EYES
次いでMETALステージに登場したTHOUSAND EYESは、直前のEND ALLとは対照的な存在として強く印象に残った。勢いだけで押すのではなく、全体像を見渡しながら組み立てられているかの、重く激しいステージだった。現代的なサウンド・プロダクションや、海外基準を意識したアプローチを武器としながらも、それを前面に押し出し過ぎないところが見事だ。飽くまで自然体で、“今の自分達が鳴らしているのはこのサウンド”とのスタンスが伝わってくる。

だからこそ、フロアも構え過ぎることなく、彼等をすんなり受け入れていたように見えた。THOUSAND EYESが提示するのは、文字通りの“現在進行形の日本のヘヴィ・メタル像”。それを彼等は、孤高の存在として来場者へ強烈にアピールしていたのである。

*進化を否定した世界的カリズマ:METALUCIFER
世界中に信奉者がいるMETALUCIFERが演奏を開始すると、VAMPIREステージ前の空気が一気に“濃く”なった。“ヘヴィ・メタルとは何か”という問いに対して、彼等は常に理屈ではなく音で答えてくる。その姿勢はずっと変わりなく、一切の迷いがない。余計な理屈など必要としない、シンプルで原始的なヘヴィ・メタルを志向し続けてきたが故に、とにかく濃度がバカ高いのだ。


余計な装飾を削ぎ落とし、ヘヴィ・メタルのコアな部分にこだわったプレイに呼応するかように、フロアでは拳が上がり、みんな一体となって声を上げる。海外からの来場者のリアクションも大きく、それがMETALUCIFERというバンドの説得力をそのまま物語っていた。振れ幅のある“STRIKE BACK”のラインナップの中で考えれば、彼等のようなバンドが出演することになったこと自体、本当に意義があったと自負している。
*ドイツを震撼させた北の凶獣:SABER TIGER
今年で結成45周年。そのパフォーマンスは、長く活動を続けてきたバンドだけが持つ重みが、ステージから発せられたかのようだった。圧の強い音ではあるものの、決して押し付けられることなく、これまでに積み重ねてきたモノを、そのまま今の音として鳴らしている──そう感じられたのだ。そんな自然体のスタンスが、観ている側にもそのまま伝わってくる。

現在進行形のSABER TIGERの姿がそこにあった。キャリアの長さをノスタルジーとして前面に押し出すことなく、過去を語るワケでもない。’25年夏、彼等はドイツの野外フェス“HEADBANGERS OPEN AIR”に出演し、現地のオーディエンスに衝撃を与えた。そんな彼等は、この“STRIKE BACK”においても、ここが決して若手中心の場でも、逆に回顧的な催しでもないことをハッキリさせてくれる。過去から現在へ。その線を途切れさせずつないでいく──そんな役割を果たしていたのだ。

[SET LIST:16/11/25@CLUB CITTA’]
1.Intro(SE)~斑の鳥 2.First Class Fool 3.Sin Eater 4.Hate Crime 5.Permanent Rage 6.Strike Back~Outro:End Eternal(SE)
*ATTICステージについて
今回、2ステージを備えたメイン・フロアとは別に、バー・スペースにてATTICステージを新設。それは間違いなく、“STRIKE BACK”に新たな可能性を与えてくれた。

出演ラインナップも実に多彩。トップを飾ったHEBI KATANA featuring Okkoは、音空間の作り方が印象に残る演奏だったし、SILVERBACKのKIYOが奏でる繊細で美しく優しい音は、自然と耳を休めてくれた。PUNISHの久保田陽子によるソロ・パフォーマンス(SABER TIGERの下山武徳が客演)も、彼女の陽気なキャラクターによって、楽しさと安らぎが交差する時間になっていたし、ETERNAL ELYSIUMのオカザキユキトは、バンド本体とはまた異なるトリップ感で、深いところへと沈んでいくような感覚を静かに残していった。

そこにはメイン・フロアとは異なる時間軸が存在し、チル・アウトしながらも、楽しめる空間を作り上げたことは、今後の“STRIKE BACK”に活かされていくだろう。
*非日常の世界に引きずり込まれる…:JURASSIC JADE
JURASSIC JADEの出番が近付くにつれて、VAMPIREステージ前の空気が少しずつ重くなり、緊張感が高まっていくような感覚に包まれる。目の前で起こる“儀式”をどう受け入れるのか、その覚悟を試されるからだろう。演奏が始まると、その感覚はすぐ確信に変わった。’85年結成のジャパニーズ・スラッシュ最初期バンドのひとつ。看板シンガーのHizumi含め、まさにその存在は伝説的だ。


音は暴力的だが、カオティックな自由さもある。そのサウンドは、意図的に制御されない部分を残していて、その不安定さこそがバンドの核になっている。フロアに寄り添ってくる音でないが、目の前で鳴っていると、そこから目を逸らすことは出来ない。その緊張感が、時間を進めるごとに濃くなっていく。誤解を恐れずに言えば、本イヴェントの中でも最も“危うい”瞬間のひとつだったように思う。ここで一度、空気を限界まで張り詰めさせておく。その状態で次へ進むことで、フェス全体が単なる盛り上がりでは終わらなくなるのだ。そんな役割を、JURASSIC JADEは音で担っていた。
[SET LIST:16/11/25@CLUB CITTA’]
1.血が出るまで 2.G.D.G 3.After Killing Mam 4.Chaos Queen 5.天安門上太阻升 6.誰かが殺した日々 7.ドク・ユメ・スペルマ 8.Go To The Dogs 9.Child Abuse~The D-Day (It’s To Act!)~精神病質~鏡よ鏡 10.僕等の狂気
*日本が世界に誇る唯一無二の存在:DOOM
日本のエクストリーム・メタル界において、超然的存在として長きに亘り輝きを放ってきたDOOM。今回、大トリを務めた彼等がMETALステージに立った瞬間、ある種の安心感のような気持ちを抱いた。それは──彼等のような唯一無二のバンドが、今も現在進行形で刺激的な音を鳴らしているということへの安心感…とでも言おうか。そのライヴは説明を挟む余地が殆どない。バンドのキャリアや影響力について語ろうとする前に、音そのものが全てを持っていってしまうからだ。

他に類を見ないその存在感は、この日、フェス全体の流れを何もかも受け止めた上で、それでも尚、全く揺るぎない。そうした事実が、強く、静かに伝わってくる。バンド結成はJURASSIC JADEと同じ’85年。しかし、キャリアに胡坐をかくことなく、言うまもでなく伝説をなぞるようなバンドでもない。圧巻のステージは、ただ、今この場所で“自分達の音を鳴らしている”という一点に集中しているかの如し。よってフロアの反応も、騒ぎ暴れるのではなく、彼等にしか出せない音に浸り、ひたすら身を委ねているように見えた。


“STRIKE BACK 2025”の締め括りとしてDOOMの音が広がっていった光景──それは、本イヴェントの終着点として、それ以上に相応しいモノはないと強く感じさせてくれた。
[SET LIST:16/11/25@CLUB CITTA’]
1.All Your Fears 2.Blood On The Rise 3.Fence And Barricade 4.Complicated Mind 5.Painted Face 6.20th Century A Proud Man~A Sandglass Of The Jungle 7.水葬 8.Human Noise
*最後に
“STRIKE BACK”は、日本のメタルシーンを今までの流れとは違った視点で活性化することが出来れば…という目標を掲げてスタートしたイヴェントだ。’24年の初開催で得た手応えを踏まえ、第2弾となった今回も、単なる話題性やトレンドに流されることなく、我々主宰側自身がライヴを実際に体感し、「より多くの人に観てもらいたい」「次のステージへ進んで欲しい」と思っているバンド/アーティストを中心にラインナップを組ませてもらった。
事実、ブッキングにおいて重視したのは、作品やバンド名の認知度ではなく、ライヴ・パフォーマンスが持つ説得力と、そのバンドならではの個性に他ならない。演奏力があることは大前提としつつも、将来的な海外展開や、シーン全体の発展を見据えた時に、日本国内でHR/HMバンドとしてどう活動していくのか、また、バンドの背景を含めたオリジナリティも強く意識して、バンドの選定に臨んでいる。よって、「どうしてこのバンドが今ここに立つのか」「日本のバンドとして何を提示することが出来るのか」といった視点で楽しんで頂ければ幸いだ。
さらには、世代やジャンルを超えた、様々なバンド/アーティストを同じステージに並べることで生まれる刺激や共鳴も、大きな意義として捉えてもいる。若手同士が切磋琢磨し、そこへヴェテラン勢も加えることで、イヴェント全体に緊張感と流れが生まれるのだ。これは単なるライヴ・イヴェントではない。出自や年代、鳴らす音が違っていても、それらを超越してシーンが循環し、“次”へとつながっていくための“起点”となる場になれば──そんな思いを胸に、今後も“STRIKE BACK”を継続していく所存だ。
