Posted On 2026年3月23日

ARCH ENEMY 2025年ドイツ公演レポート

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Report&Pix●Veppy

 昨年──’25年の春、通算12作目となるニュー・アルバム『BLOOD DYNASTY』をリリースし、4~5月の北米サーキットに続いて、10月よりヨーロッパ・ツアーを行なったARCH ENEMY。そのタイミングでドイツに滞在していたこともあって、ツアー3日目となるミュンヘン公演をキャッチすることが出来た。電車で会場へ移動中、どんどんファンが乗り込んできて、まるでフェスに行くのかと錯覚するほどのその多さに驚く。若い女性ファンの中には、アリッサ・ホワイト=グルーズ<Vo>を意識したであろう髪を青く染めたファンや、まんまコスプレしたファンも少なくない。会場のZenithホールに到着すると、その大きさにも驚いた。ザックリ6000~7000のキャパシティらしく、イメージとしては幕張メッセ国際展示場ホールが近いだろう。

 会場に着いたのは開場時間を少し過ぎた頃だったハズなのだが、既にオープナー、GATECREEPERのパフォーマンスが始まっていた。時おり美メロも交えたオールド・スクールなデス・メタルに対する観客の反応は悪くない。40分ほどプレイしただろうか。彼等の演奏が終わった時点で、場内の埋まりは3/4ほどだったと思う。いや、まだまだ入場列は途切れることがなかったので、最終的に会場はほぼ満員になったのではないだろうか。

 物販は1ヵ所だったが、それほど混み合うことなく、ファンは欲しいアイテムをスムーズに購入していた。女性ファンには──先日の“LOUD PARK”会場でも売られていて話題となった──ARCH ENEMYの“Kawaii”Tシャツが好評なようで、購入後、即ペアルックで揃えるカップルもチラホラ見かけられた。その物販よりも賑わっていたのがドリンク・ブース。物販スペースよりも広く、何ヵ所も設けられていてどこも大行列だ。ARCH ENEMYのプラスチック・カップが4~5種類、デポジット・システムで使用されていたが、ここでも“Kawaii”カップが大人気で、最後にはかなり品薄になっていたようだ。

AMORPHIS

 続いて登場したのは、この年の9月にニュー・アルバム『BORDERLAND』をリリースしたばかりだったAMORPHIS。オープニングはその新作から「Bones」を披露。重厚な荘厳さと憂いあるメロディが会場に広がっていき、ゆるりとしたグルーヴにダークな美しさを芳醇に湛えたメロディが、来場者を大きく揺らしていく。目を閉じながらAMORPHISの世界に入り込んでいるファンも多い。まるで祈るようにマイク・スタンドを掴みながら、時にディープ・ヴォイスを操り出し、慟哭の情感を練り込むトミ・ヨーツェンの姿は神々しくもあった。

 オープニングのGATECREEPERは、ステージ全体を使わせてもらっていなかったが、流石にAMORPHISは制約もほぼなくステージを活用出来ている様子だ。全9曲と短いショウだったが、後半に飛び出した、東洋的メロディを内包したギター・ソロの美しさに心奪われる「Death Of A King」、トミが「懐かしいナンバーを続けるぜ!」と煽って続いた陰鬱な「Black Winter Day」、そして、美しいキーボード・ソロが印象的だった「House Of Sleep」の3連発は、個人的にかなりアツくさせられた。

 観客の反応も上々で、「Black Winter Day」ではかなりのクラウドサーファーが“波”──観客の頭上を転がり、ラストの「The Bee」を終えると、大きな拍手と歓声で彼等を送り出していた。新作『BORDERLAND』からだけでなく、様々なアルバムからセレクトされたセットリストだったが、50分では少し物足りなさを感じたのも事実だ。

[SET LIST:12/10/25@Zenith, Munich, Germany]
1.Bones 2.Silver Bride 3.Wrong Direction 4.The Moon 5.Dancing Shadow 6.Death Of A King 7.Black Winter Day 8.House Of Sleep 9.The Bee

ELUVEITIE

 20時をほんの少し過ぎた頃、3番手のELUVEITIEが登場。ちなみに、彼等とAMORPHISの出順は日替わりになっているようだ。オープニング曲は、’19年作『ATEGNATOS』の表題曲で、メランコリックなイントロから徐々に盛り上がり、クリゲル・グランツマンのグロウルと、ファビエンヌ・エルニの透明感あるクリーンとのヴォーカル対比が印象的だ。ハーディ・ガーディなど古楽器奏者を含む8人組の彼等。ステージ上をメンバーが縦横無尽に駆け抜け、どこにフォーカスすれば良いのか…というのは嬉しい誤算で、そんな様子を観ていて、単純に大所帯バンドは大きなステージが映えるな…とも思った。

 2曲目は疾走系の「Deathwalker」で、大きなモッシュ・ピットがフロアに大きな渦を生み出す。セットは『ATEGNATOS』と、現時点での最新作『ÀNV』(’25)の楽曲がメイン。フォーク・メタルならではの陽気なメロディに、ビール・カップを高々と掲げ、肩を組み踊っているファンも多い。中盤、バラード調の名曲「A Rose For Epona」でフロアをしっとりとクール・ダウンさせてから、狂暴な「Premonition」で再び大きなモッシュピットの渦を作り、憎らしいまでに来場者を操っていたのも流石だ。

 ファビエンヌが弾くハープ、クリゲルが吹く各種フルート類、レア=ゾフィ・フィッシャーによるフィドルとハーディガーディ等、様々な楽器を駆使し、各人がそれらを手にした時のワクワク感も楽しく、ラストの「Inis Mona」まではあっという間。これまた50分と短いショウだったが、大いに堪能した。

[SET LIST:12/10/25@Zenith, Munich, Germany]
1.Ategnatos 2.Deathwalker 3.The Prodigal Ones 4.Exile Of The Gods 5.A Rose For Epona 6.Premonition 7.Ambiramus 8.The Call Of The Mountains 9.King 10.Inis Mona

ARCH ENEMY

 ELUVEITIEが去ったステージに、ARCH ENEMYのシンボルマークと共に“PURE FUCKING METAL”と大きく描かれた巨大な幕が掲げられる。場内には、AC/DC、QUIET RIOTといったハード・ロックだけでなく、DIRE STRAITSといった’80年代のクラシックも流れており、ご機嫌な酔っ払いも増えてきたことから、なかなか良い雰囲気に。IRON MAIDENの「The Number Of The Beast」がフェードアウトし、OZZY OSBOURNEの「Bark At The Moon」に変わって、それが大音量で流れると場内は暗転。フロアに大歓声が沸き上がる。それがオジー追悼を意味しているとみんな理解しているのだ。

 SEがそのまま「Set Flame To The Night」に移ると、幾つものライトが幕を照らし、その奥にダニエル・アーランドソン<Ds>のシルエットが浮かび上がる。彼がポジションに付き、「Deceiver, Deceiver」のイントロがスタートしても、まだ幕は落ちない。マイケル・アモット<G>、ジョーイ・コンセプシオン<G>、シャーリー・ディアンジェロ<B>の順にシュルエットがクローズ・アップされ、最後にアリッサがマイクを縦にクルクルと回す姿が大きく浮かび上がり、彼女のシャウトを合図に曲が走り出すと、遂に幕が落ち、スモークと共にステージが露わになる。

 マイケルとジョーイによる哀愁のメロディを含んだブルータルな「Deceiver, Deceiver」に、早くもクラウド・サーファーが続出。フロアには複数モッシュ・ピットの渦が巻いている。間髪入れず続いたのは、彼等のクラシックである「Ravenous」。正直、このポジションでこの曲がプレイされるとは思わなかったので、かなりの驚きだ。それは観客も同様だったようで、場内にはさらに爆発したかの大歓声が起こり、凄まじい盛り上がりとなった。

 「Ravenous」終わりでメンバーが一旦ステージから去り、『BLOOD DAYNASTY』収録「Dream Stealer」のドラマチックなイントロが流れると、再びメンバーがステージに姿を現す。叙情的なメロディと共に狂暴に疾走するこの曲も、既にクラシックかと思わせるぐらいに盛り上がり、続くヘヴィなミドル・チューン「Blood Dynasty」で少しクールダウンしたかに見えたが、決して反応が悪いということではない。

 中盤以降は、新作からの「Illuminate The Path」を含めミドル・テンポの曲が並び、アリッサの歌唱も、デス声というよりもっとナチュラルなシャウトが目立ち、さらにクリーン・ヴォイスも巧みに取り込んだ印象。特にダークな「Sunset Over The Empire」などでは、表情が変わるぐらいに、アリッサの表現力がより際立っていた。マイケルとジョーイのコンビネーションはまさに鉄壁。攻撃的な牙を剥いたと思ったら、叙情的なソロを聴かせ、ツイン・リードでも場内の興奮を煽りまくる。

 終盤、アリッサが「No Gods, No Masters」を高らかに歌い上げると、フロアのそこかしこから拳が突き上がる。そして、本編最後にドラマチックな「Avalanche」を持ってきたのが実に心憎い。アリッサの声はナチュラルな女性らしいしなやかさを湛えた表現力を感じさせ、美しいメロディを絡めたマイケルのギター・ソロが心深く染み入った。

 アンコールは、静寂の闇の中からジョーイが姿を現し、アルペジオを奏でると、マイケル登場してそれに追従。そう、「Snowblind」だ。『WAGES OF SIN』(’02)収録のこのインスト小曲が、静かに観る者の心を振るわせていく。続くラストは必殺とも言える「Nemesis」で、「Snowblind」に聴き入っていたオーディエンスのケツを叩き上げ、多数のバルーンとクラウド・サーファーが人の波の上を舞い、「Fields Of Desolation」のラスト・フレーズを置き土産に、彼等のショウは大団円を迎えた。

 ARCH ENEMYのライヴはこれまでに何度も観ているが、今回はアリッサが無理にデス・ヴォイスで捻じ伏せることをせず、ナチュラルなシャウトやクリーン・ヴォイスを用いて、女性ならではの柔らかな表現力を強めた感があったのに驚き、そこが個人的にポイントが高かった。また、ミドル・テンポの曲が多く、それほど攻撃的なセットではなかったものの、マイケルとジョーイのコンビネーションやツイン・リードのメロディが際立つ選曲は、彼等が言うところの“PURE FUCKING METAL”をより印象付けたに違いない。ある意味、ARCH ENEMYの印象が変わった好ライヴだとも思った。

[SET LIST:12/10/25@Zenith, Munich, Germany]
1.Set Flame To The Night(SE) 2.Deceiver, Deceiver 3.Ravenous 4.Dream Stealer 5.Blood Dynasty 6.War Eternal 7.My Apocalypse 8.Illuminate The Path 9.Liars & Thieves 10.The Eagle Flies Alone 11.First Day In Hell 12.Saturnine(SE) 13.Sunset Over The Empire 14.No Gods, No Masters 15.Avalanche [Encore]16.Snow Bound 17.Nemesis~Fields Of Desolation(Outro) 18.Enter The Machine(SE)

 …と、レポート公開が遅くなってしまったら──何とこのツアーを最後に、アリッサがまさかの脱退をしてしまった! 彼女がいつその決断をしたのか定かではないが、振り返ってみると、前述したヴォーカル・スタイルの変化にその前兆があったのかもしれない。また、当ツアーを撮影した写真を見返してみると、アリッサと他のメンバーに距離感があったような気も…。まぁ、結果論的な考察でしかないのだが。

 その後ARCH EMENYは、元ONCE HUMANのローレン・ハートを後任シンガーに迎え、間もなく新体制にて来日公演を控えている──彼等が『BLOOD DYNASTY』に伴う日本ツアーをアリッサと共に行なえなかったことは、今さらながら本当に残念でならない。

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